さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

私は、震えそうな足をなんとか抑えて、衣装ラックへ歩み寄る。

ハンガーを静かに移動させながら、かけてある衣装を順に見ていく。

──すると、案の定。

ズタズタに切り裂かれた、『セレナーデ』チームの衣装が一着。

震える手で、ネームタグを確認する。

『冨上栄輔』

私はしばらく、その場で立ち尽くすことしかできなかった。

……あの、バカ。

栄輔が絡むと頭に血が昇ってIQが下がるのは知ってた。けど、流石にここまで後先考えない行動に出るとは思っていなかった。

普段の遥風なら、絶対に見逃さないはずなんだけどな。

舞台袖に設置された、防犯カメラ。

確かに一見分かりにくい場所にあるけど……普通、ちゃんと確認するでしょ。

自分で『カメラを見つけるプロ』とまで言っていた彼が、ここまで決定的なミスをするなんて。

この衣装騒動が表沙汰になれば、まず最初に確認されるのは防犯カメラの映像だ。

そうすれば、犯人が遥風だということはすぐにバレる。そうなったら、番組側はおそらく隠してはくれない。
『悪編』のネタとして、視聴数稼ぎに使うだろう。そうなれば、炎上は間違いなし。

……もう、遥風と関わるのやめようかな。

ふと、そんな考えが過ぎったけれど。

それでも、彼の純粋な笑顔が、脳裏にこびりついて離れない。

……きっと、本人の意思じゃない。何か、別の理由がある。

それが直感なのか、そう信じたいだけなのかは、もはや分からない。

けれど、もしも彼がまた何かに追い詰められ、自棄になって、こんなくだらないことで自分の夢を捨てようとしているなら。

そんなこと、絶対許せない。

身体の震えが、おさまってきた。

唇を引き結び、切り裂かれた衣装を握り締める。

これが番組側にバレる前に、夜が明ける前に、私がなんとかしないと──。