さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「がはっ……」


糸が切れたみたいに、膝をついて倒れる男。

整髪料で撫で付けられた男の髪を、霞はグイと土足で踏み躙った。


その瞳に、憎しみや苛立ちの色はない。

潰れた虫を見下ろすような、冷え切った無関心。


衝撃的な光景を前に、私は何も言えず固まっていたけれど。

そのとき、ふいに向こうから、カチャ……という微かな金属音がした。


「……?」


そちらに目を向けると、一番最初にダウンした男が早くも意識を取り戻したようで。

俯き、気絶したふりをしながら、そっと懐に手を入れていた。


──ま、ずい。


「霞っ……!!」


私が思わず声を上げると。


すぐさま、霞は制服のポケットに手を入れ──


カチャッ。


黒光りする拳銃を、構えた。


「っ……」


男の動きが、止まる。

同時に私も、ヒュッと息を呑んでしまった。


……うっ、そ……

携帯してんの……??


ぴたりと照準を合わせ、静止した腕。

霞はそのまま、ツカツカと男の方へ歩み寄ると。


ゴリ、とその銃口を額に突きつけた。


「──三秒やる。失せろ」


有無を言わせぬ声音。

男はその冷たい視線に真正面から威圧され、喉をひくりと上下させたのち──


「……っ、くそっ」


耐え切れなくなったように、腹部を押さえて立ち上がった。


「行くぞっ!!」


力任せに、仲間へ怒鳴る。

それに応え、うずくまっていた男二人もよろめきながら立ち上がった。