さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「……わざわざ自分から来るたぁ、案外可愛いとこあるじゃねぇか」

「手間が省けたな」


飛んで火に入る夏の虫、とでも思っているのだろう。

舐めた笑みを浮かべながら、一人の男が霞へ殴りかかる。


「っ……!!」


危ない、と息を呑んだ、次の瞬間。


「ぐっ──?!」


苦悶の声を上げたのは──

霞の方ではなく、殴りかかってきた男の方だった。


…………は?

何が起こったのか分からない。


けれど霞の膝は確かに相手のみぞおちにめり込んでいて、その巨体がくの字に折れる。

呼吸が止まった瞬間を狙って、頬に叩き込まれる拳。


大柄な身体がグシャッ!!と壁に激突し、崩れた。


──速い。

どこを叩けば相手が沈むのか、嫌というほどわかってる人の動きだ。


「っ、てめぇ!」


もう一人が、怒鳴りながら突っ込んでくる。

ふ、と面倒そうに目を細める霞。

ヒョイと重心をずらして紙一重で交わし、よろめいた背中に重い肘を叩き込んだ。