思わず硬直する私の横で、すぐさま言い訳をする遥風。

「次の髪型何色にしようって千歳が言ってて。灰色とかいいんじゃね?って話してただけ。灰掛とは言ってない」

よくもまあ、口から出まかせがスラスラと。

遼次も「そういうこと」と納得した様子で頷いてしまっている。遥風、こういう時の頭の回転の速さはピカイチなんだよね。

ちょっと呆れながら2人のやり取りを見ていると、遼次と目が合った。

「……ブリーチ、髪の毛細いと傷むよ」

遼次の言葉に、私はちょっと首を傾げる。
私が髪色を変えるってなったら、多分ウィッグごと変えることになるだろうし、その心配は無さそうだけど……。

「細いのかな、俺の髪」

なんとなく、ウィッグの髪を触ってみる。髪の太さとか、あんまり気にしたこと無かった。

ていうか、このウィッグ、微妙に長くてうざったいんだよね。長めな方がミステリアスな感じが出るからって涼介さん言ってたけど、普通に邪魔なんだよなぁ。

さら、と頬に落ちる横髪を耳にかける。

「っ……」

そんな私を見て、微かに息を詰まらせる遼次。
なんで、と思ったけど、すぐに思い当たる。

……そういえば、耳掛けって女子っぽい仕草の代表だ。
男子っぽい仕草を意識してはいるけど、気を抜くとつい女子っぽい所作をしてしまう。
気をつけなきゃ。

そんなふうに思った次の瞬間。

すっ、と遼次の手が伸びてきて、私の髪にさらりと指を通した。

思わず、ドキッと心臓が跳ね上がる。

遼次の指の間からこぼれ落ちていく髪。

「細い」

急な距離の近さに、心臓がバクバクと高鳴る。遼次って、そんなことするタイプだったっけ……。

「──おい」