さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



ガチャン、と背後で扉を閉める音がしたところで、遥風は再び口を開いた。


『……お前なら分かってくれると思ってたよ、千歳』


先ほどまでの爽やかボイスはどこへやら、疲労感の滲んだ低い声。

だいぶしつこく来られてたんだろうな……と苦笑しつつ、私は聞いてみる。


「誰に絡まれてたの」

『個人仕事で一緒になった……モデル?だか、アイドルだか何か』

「仕事で一緒なら名前と職業くらい覚えなよ」


相変わらずの遥風に苦笑してしまう。

よくそれでやっていけてるよね……。


ちなみにこの休暇期間、静琉はエマプロ広報のためなのか、翔や遥風など一般知名度の高い参加者をやたらと個人仕事に派遣するようになった。

デビュー前でも使えるものは全て搾り取ってやろうという、社長様の商魂たくましさが窺える。


私は学校があるから面倒な仕事を回されず良かった……と、一瞬安堵しかけたけれど。


よく考えたら、今の霞攻略作戦も静琉から回された仕事の一環か。

それも、一番面倒くさい部類の。


だったらアイドルらしい個人仕事の方が百倍良かった……と恨みがましくなる私をよそに、遥風は続ける。