さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「はい……」

『あー、もしもし?今どこ?もうすぐ着くー?』


…………ん?

電話越しに聞こえてきた脈絡のない遥風の声に、一瞬固まる。


間違い電話?と聞き返そうとした私だったけれど、スマホの向こうから漏れ聞こえてくる雑音に、すんでのところで飲み込んだ。


──と、いうのも。


『え〜、遥風くん帰っちゃうの〜?』

『マジで彼女〜?』


なんとなく、状況を察してしまったから。

これ多分……どっかでチャラい女の人たちに絡まれてるんだろうな。

逃げ場をなくしてるから、私に彼女のフリをしろってことなんだろう。


全く、人使いの荒い……。


少し呆れてしまいつつ、私は地声を使ってなんとなく話を合わせた。


「……うん!十分後くらいになるから、外出て待ってて」

『っ!了解。今出るわ、ありがとう』


遥風のホッとしたような、どこか芝居がかったような爽やかな声。

場所を移動し始めたのか、『えぇー!』という女の人たちの落胆の声が徐々に遠ざかっていく。