「……っ、」
目の前で。
茉白が、千歳の顎を指先で持ち上げ──
柔らかく、唇を重ねた。
…………
…………は?
思考が、停止する。
何が起こっているのか、分からない。
割り込むこともできず、数秒間、立ち尽くしている間に──
二人の唇は、ふっと離れて。
そこでようやく、俺は弾かれたように視線を逸らした。
……なん、だ、今の。
なんでキスしてんの。
しかも、千歳、まったく抵抗してなかったし。
押し返すでもなく、驚くでもなく、まるでそれが当然かのように、黙って受け入れて。
あの落ち着きようじゃ、どう考えても初めてのキスじゃない。
って、ことは──
「へぇ。付き合ってんのかな、二人」
ぽつり、と。
思考に被せるように、京の呟きが落ちる。
……
…………はぁ???
一拍遅れて、脳内でプツンと何かが切れた。
……ふざけんな。
マジでふざけんなよ榛名千歳。
散々こっちの心をかき乱して、好き勝手振り回して。
グイグイ距離詰めて、挙句あんなキスまでしてきたくせに──
なにを今更、他の奴のとこに行ってんだ?
