思わず、ぽつりと本音が溢れる。
すると、一瞬の間の後。

私の手首を掴む手がするりと移動し、指を絡ませようとしてきた。

……待って、恋人繋ぎしようとしてる?

そう気づいた瞬間、私は反射的にギュッと拳を握りしめ、手を繋げないようにする。

「……何」

「撮られたらどうするの」

咎めるように口にすると、遥風がちょっと眉を上げた。
そして、ちょっと揶揄うように笑う。

「……撮られなければいいの?」

「いや、そういう意味じゃない」

「大丈夫、俺カメラ見つけるプロだから」

「だから違うってば……!」

私はなんとか遥風の手を押し戻そうと、手に力を込め、ギリギリの攻防戦を続ける。

「今日も部屋来いよ」

「ぜーーーったい、行かない。昨日が最初で最後」

私のキッパリとした言葉を受け、遥風の目がすっと細まった。

「他に男できたんだ」

「できるわけないでしょ。っていうか、『他に』って……別に遥風だって彼氏じゃないじゃん」

「はぁ……いいよ、どうせ遊びなんだろ。クソがよ」

冗談めかしてそう言ってくる遥風に、「メンヘラやめて」とすぐさまツッコむ。

うん、やっぱり遥風とはこれくらいの、冗談を言い合える友達くらいの距離感でいたいな。

だって、彼と関係が深くなればなるほど、スキャンダルの火種になる。流石にここら辺で節度を保たないといけない。

「だってお前、マジでおかしいくらい可愛いし、他に狙うやつ出てきてもおかしくない」

「……流石に男装してるのに狙う人はいないと思うけど」

「いや、だとしても絶対あぶねーから」

遥風は一旦周囲を見渡して誰もいないことを確認すると、身を寄せて小声で聞いてきた。

「お前、さっきのルームメイトには本当に男装バレてないわけ?」