さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



私はなんとか冷静になろうと必死に努めつつ、辛うじて質問を絞り出す。


「……なんで、そう思ったの」


その問いかけに、ちょっと動きを止める茉白ちゃん。

「あー……」と、曖昧な声を漏らしながら、少し逡巡するような間。


ふっ、と視線を伏せた横顔、西日に透ける長いまつ毛が綺麗で、思わず一瞬見惚れてしまう。


そんな私をよそに、彼女はぽつり、と。

独り言みたいに、静かに落とした。


「わかるよー。好きな人の好きな人くらい」


…………

…………え?


脳が、麻痺したみたいになって。

言葉の意味を、すぐには飲み込めなかった。


『好きな人の、好きな人』


数秒後 ようやくその意味を理解した瞬間、私はハッと顔を上げ、慌てて彼女の表情を窺った。


潤んだ瞳、微かに上気した頬。

恥ずかしそうに視線を逸らす仕草。



──あ。

まっ、ずい。



ドク、ドク、ドク、ドク。

胸の鼓動が、嫌に加速し始める。


この空気感は、どう考えても、友達としての好意の範疇じゃない。


間違いなく、茉白ちゃんは今、榛名千歳という男──

唯一自分を品定めしなかった『異性』としての私に、好意を抱いている。