さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



──茉白ちゃんが、私の下心のない視線とか、そういうものに救いを見出してるのだとしたら。

何かの拍子で私が女だとバレて、自分のことを対等に見てくれる異性なんて最初からいなかったと気づいたとき。


彼女はもう一度、絶望の淵に突き落とされてしまうんじゃ無いだろうか。


救いだと思っていたものが虚像だと分かった瞬間ほど、辛いことはない。

私に突き放されたときの皆戸遥風の動揺や、若原清架に捨てられたあとの峰間京の自暴自棄を見て、痛いほどに学んできたことだ。


……だとしたら、なおさら彼女に女バレするわけにはいかない。


嘘を完璧に貫き続けて彼女の拠り所を演じ続けることが、私にできる精一杯の支えだろうから。


そんな私の決意など知らず、茉白ちゃんは悪戯っぽく笑いながら話を続けてくる。


「ねぇ。せっかく二人きりだしさ……いっこ、踏み込んだこと聞いてもいい?」


私のことを気遣って、話題をカジュアルなものに変えようとしてくれているのだろうか。


『踏み込んだこと』というのがちょっと怖い気もするけど……

これ以上空気を重くするのも良くないから、私は切り替えて「いいよ、何?」と聞き返す。