「え……、な、なんで……茉白ちゃん、売れてるのに」
枕といったら、下積みの無名アイドルたちが、藁にもすがる思いで端役をつかみ取るために行うイメージだった。
デビューして数年、今やドームツアーまで成功させているメジャーグループのメンバーが、どうしてそんなことをする必要があるのか。
呆然とする私を前に、茉白ちゃんはふっと自嘲気味に目を伏せた。
「……売れてからの方が、落ちたくない、って思っちゃうものなんだよ。ここまで来たのに、って思っちゃう」
凪いだ声音。薄く弧を描く唇。
笑っているのに、今にも壊れてしまいそうな彼女の横顔を、私は息を止めて見つめることしかできない。
「エマは大きい事務所だけど、その分抱えてるタレントも多いでしょ。だから大きな仕事が来た時、同じくらいの数字を持ってる子が並んでたら……まぁ、先方への『接待』の良さで決まっちゃうよね」
「……」
「どうせスイモニの誰かがやらなきゃいけないなら、別に私でいいかなって。ほら、私って、男ウケだけは良いでしょ」
首を傾げて、ニコッと微笑んでくる茉白ちゃん。
