──かと、思いきや。
「……っふふ」
不意に、向かい側から溢れる押し殺した笑い声。
視線を向けてみると、茉白ちゃんが、俯いて肩を震わせているところだった。
…………いや、なんで。
「何ツボってんの」
「いや……ふっ、さっきの千歳のアラーム音へのビビり方が……猫みたいで……」
「えぇ?」
猫って。
やっぱり私、この子に結構ナメられてるよね。
男だと思われてないどころか、人間とすら思われてない説ある……。
笑われすぎてなんだか恥ずかしくなってきた私は、ちょっと口を尖らせて、話題を変えるように質問を投げた。
「……それより、茉白ちゃんは行かなくて大丈夫なの」
「私はこの後、別の個人仕事だから。夏葉と時間ずらしてマネージャー下に迎え来るって」
言いながら、茉白ちゃんはナチュラルに自分の荷物を移動させると、そのまま私の隣に座り直してきた。
距離が近くなったことで、ふわりと漂ってくる彼女の香水の匂い。
甘い花の香りに、ちょっとだけ落ち着いたウッディさも滲んでいるお洒落な香りだ。
香水どこの使ってるんだろう……芸能人だから、やっぱ高いやつなんだろうな。
聞いてみようかな?と口を開きかけて──私はハッと踏みとどまった。
