「ちょ、ましろんそのちっちゃいケープ貸して」
「あーごめんこれもう無い。今日切れた」
「嘘でしょ?!いやどーしよウチ今日アホ毛スティックしかないよ」
「それ変に束になるから絶対ダメ!」
どうやら必需品の不足が発覚したらしく、一瞬にして混乱し始める現場。
私も前髪は顔の印象を決めるのに一番大事だと思ってるから、ちょっと同情してしまう。
とはいえ、変に共感したらまた墓穴を掘ることになるので、口をつぐむしかできないけれど。
と、そんなハプニングでどうなることかと思われた女装作戦だったが──
そこにちょうど、救世主のごとく顔を出した男が一人。
六限終わりの二年生、兎内陽斗だ。
私の醜態を楽しみにひと足さきに飛んできたのだろう、ヒョコッとラウンジ入り口から顔を出したが──
こちらの姿を見とめ、その完成度の高さを目の当たりにするなり、露骨に興味を失ってくるりと踵を返す。
けれど生憎、この絶好のタイミングで現れた美容系男子を取り逃すほどJK組はバカじゃない。
