さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



ランチクロスの中には、ポツンと小さなタッパーがひとつ。

食堂に空き容器がこれしかなかったから、とりあえず詰めて持ってきたんだけど。


…………何かが足りない気が。


顎に手を当て数秒考え──はた、と気がつく。


「やばっ、箸入れるの忘れた」


私の言葉に、「え?」と周囲の視線が集中した。

お弁当を作り切ったことで満足してしまって、カトラリー類を一緒に持ってくるのをすっかり忘れてしまったのだ。

いつもパンとかおにぎりとか、手で食べるものばっかりだったから……完全に失念していた。

どうしようかな……と内心首を捻っていると。


スッ。


俯いた視界に、流れるようにプラスチック製の箸が差し出された。

顔を上げると、その持ち主は──小山明頼。