さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



…………あっ、ぶね。

あと少し部屋を出るのが遅かったら、この目がキラキラした優しそうなお爺さまに、愛する坊っちゃまのBL現場をガッツリ見せつけてしまうところだった。


と、内心冷や汗ダラダラになりながらも、同時に罪悪感も湧き上がる。

こんなに喜んで準備してくれたのに、申し訳ないな……。


しかもこの反応を見るに、完全にあの御曹司が私に何かをやらかしたと思い込んでそう。

どちらかというと、やらかした側は私の方なんだけど……そんなことは口が裂けても言えない。


とはいえ、このまま放っておいて帰るのもなぁ。

長年暴君御曹司に振り回され続けてきたであろう彼を、少しでも安心させてあげたい。


そう思った私は、一度は電池切れした演技モードを根性で無理やり再起動した。


「……せっかくなので、ひとつ頂いてもいいですか?」


微笑みながら立ち上がり、視線を合わせて聞くと、執事さんは「はっ?も、勿論でございます……!」と、深々とお辞儀をしてお盆を差し出してくる。

小動物みたい……と少し笑ってしまいつつ、私はひとつ、桜の形の練り切りを取って口に運んだ。