さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「──もうお帰りになられるのですか?」


ビクッッ!!


完全に油断していたところに声をかけられ、大きく肩が跳ねる。

だっ、誰……?!微塵も気配を感じなかったけど。


バクバクと高鳴る心臓を抑えながら、慌てて顔を上げると。

そこに立っていたのは、先ほど私たちの前で思いっきりボロ泣きしてたお爺さん。


黒スーツを着ているけれど、丸メガネ+背が小さい+蝶ネクタイのせいで、全く持って威圧感が無い。

この人、これでヤクザなのかな……?それとも、ただの霞のお目付け役?執事的な?


「あ……はい、帰ろうかなと」


戸惑いながらもそう言うと、執事的なその人はしゅん……と肩を落とし、申し訳なさそうに目を伏せる。


「そうですか……お部屋にお茶とお菓子をお持ちしようと思ったのですが」


彼の手には、いかにも高級そうな朱塗りのお盆。湯気の立つ玉露と、お上品な練り切りがちょこんと並んでいた。