さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……まだ脳みそが追いついてない。


あまりに屈辱的だから、言葉にして認めるのは癪だけど──


俺、今。

男にキスされた。


キスしたんじゃない。『された』。

リードされたってことだ。


キスをリードされたのなんて、もう何年振りだ?

しかも、その相手がよりによって榛名千歳……同じ女を狙ってる恋敵で、世界で一番大嫌いなムカつく男って。


「……意味わかんねぇよ」


苛立ちをそのまま吐き捨てると共に、ドサッ、とソファに背中から倒れ込む。

あんなガッツリキスまでしてきて俺のこと好きなのかと思ったら、最後までしっかり神経逆撫でしてきやがるし……マジで何がしたいんだ、あのクソ野郎。


好きなのか、嫌いなのか。

本気なのか、揶揄いなのか。

はっきりしろ。


じゃないと──

この先ずっと、お前のことを考え続けなきゃなんねぇだろうが。


「クッソが……」


腕で目元を覆う。

かすれた声で吐き捨てた悪態は、静まり返った部屋の空気に、溶けるように消えていった。