ふたりで再び保人の家を訪ねた時、その外観を見ただけでなにか違う雰囲気を感じていた。

近づいて玄関チャイムを鳴らしてみるとけれど誰も出てこない。
「表札が外されてるんだ」

違う雰囲気の正体に気がついた貴斗が、玄関横を指差していった。
そこには長方形の跡が残っていて、つい最近表札を取り外したことがわかった。

「嘘、もしかして引っ越したとか？」
それは予想外のことだった。
まだ保人の両親はここで暮らしているとばかり思っていた。

何度チャイムを鳴らしてみても人の気配はしないし、薄いカーテンがひかれている窓の向こうは真っ暗だ。

「あら、沼岡さんの家になにか用事？」
突然そんな声が聞こえてきて振り向くと買い物袋を右手に下げた女性が立っていた。

近所の人なのか左手には家の鍵らしきものを持っている。
「あ、はい。保人くんの同級生です」
咄嗟に返事をすると、その人は残念そうに顔を歪めた。