「最近この近辺で野良犬や野良猫が死んでいるのが目撃されています。もし死体を見つけても不用意に近づいたりしないように」

担任の女性教師の言葉が右から左へと抜けていく。

西岡谷中学校2年C組の朝のホームルームはとても静かでほとんど物音は聞こえてこない。
担任の話を真面目に聞いている生徒もいれば、朝から机に突っ伏して眠っている生徒もいる。

そんな中、ひとり椅子に座ってジッとうつむいている男子生徒の姿があった。

紺色のズボンの上で両方の拳が固く握りしめられ、微かに震えているようだ。
その顔はひどく青ざめていた。
「沼岡くぅん? 今日も一緒に遊ぼうねぇ?」

教師が教室から出たあと私、川南愛花はうつむいて震えている沼岡保人に近づいた。
保人は青白い顔を上げて恐怖で顔を歪めた。

昨日の昼休憩中に無理やり全裸にさせて体育館の中を走らせたのが相当こたえているみたいだ。

でもそんなのは気にしない。
だって相手は沼岡保人だから。
私はニタリと笑って前髪をかきあげた。