ふたつのさくら

……待ち合わせ場所の郵便局に到着したところで、声をかけてくる人物がいた。

「さっくんおはよ!今日も早いねー。」

元気にそう言った彼女の名前は、岡崎璃奈。

覚えているだろうか。

4月の最初、狛犬の妖怪に取り憑かれていたところを助けた、岡崎先生の姪っ子だ。

あのあと、岡崎先生はしっかり1週間彼女を休ませて、新学期が始まってから3週目、ようやく璃奈さんは登校してきた。

見た感じ特に異常はなさそうだし、感じられる霊力も安定してるから、もう大丈夫だろう。

……僕の予想通り、彼女は小中学校にあまり通えていなかったらしい。

だからなのか、高校生活は全力でエンジョイしようぜ!って心意気をすごい感じる。

ちょっとだけ、苦手なタイプ……。

ほら、あの、陽の者って眩しいじゃん?

だからなんか、一緒にいると自分の暗さが目立って……。

まあ、それだけじゃないんだけども。

「おはようございます、璃奈さん。」

だから僕は簡単に返した。

カバンを開いて、読みかけの小説を出す。

しおりを外して、壁に寄りかかりながら読み始めた。

いつもならそれだけ言うとすぐに学校に向かうんだけど、今日はなぜか行かなかった。

代わりに、何かを少し考えるようなそぶりをして、声をかけてきた。

「ねぇねぇさっくん。何読んでるの?」

璃奈さんが覗き込んでくる。

距離が近い……。

「ただの小説ですよ。」

一歩左に避けながら答える。

璃奈さんは一歩近づいて、また聞いてきた。

「おもしろい?」

「おもしろいですよ。」

また一歩、左に行く。

近付く。

離れる。

近付く、離れる……。