ふたつのさくら

『全然?それじゃまたあとでね!』

「はい。」

冗談っぽく言った咲良さんに、それだけ言って、電話を切った。

絶対、心配かけてたよな。

あーあ、笑ってて欲しいのに。

ただそれだけなのにな……。

僕が原因で咲良さんの笑顔が消えるなら、いっそのこともう全部話そうかな……。

それで嫌われて、どこか別の場所で笑っててくれた方が咲良さんは幸せ?

そう思うのに、また状態が良くなる「かもしれない」なんて幻想に縋っていた。

カバンの中身を見る。

今日の授業で使う教科書類、筆記用具、財布。

この辺は普通。

それらに紛れて、普通じゃないものがひとつ、入っていた。

20センチくらいの短刀だ。

最近はずっと持ち歩いている。

持ち歩いているけど、いまだに使ったことはない。

まぁ、あったらそれはそれで事件だから。

これから先も使わないに越したことはない。

持ち物に不足がないことを確認して、ジャケットと薬を持って部屋を出た。

そしていつも通り朝食を食べて、学校へと向かった。