ふたつのさくら

……次の日、月曜日。

6時にセットしたアラームが鳴る前に、僕は目を覚ました。

全然スッキリしない目覚めではあるが、見回りに行った次の日は大体こうだ。

「ぅんー……はあ。」

起き上がって伸びをする。

変なところはない。

体調も悪くない。

大丈夫そうかな?

立ち上がって着替えをしようと思ったところで、携帯のアラームが鳴った。

遅いよ。

それを止めて、着替えをする。

ワイシャツだけ着て、洗面所に向かった。

洗面所には、真正面に鏡が置いてあって、嫌でも自分の顔を見ることになる。

「はぁ……最悪。」

目が、戻っていなかった。

本来は黒いはずの僕の瞳は、紅くなっていて、鏡の向こうから僕を見つめ返してていた。

目を閉じて、大きく深呼吸する。

戻れ、戻れ、戻れ!

再び目を開けたときには、いつも通りの黒い瞳に戻っていた。

顔を洗って洗面所を出ようとすると、凍夜が目をこすりながらやってきた。

「凍夜、おはよう。」

「んー、にーさんおはよー……」

半分くらい寝てるな。

寝ぼけてる凍夜を置いて、部屋に戻る。

昨日やらなかった学校の支度をしていると、携帯が震え出した。

電話がかかってきたようで、相手を確認すると、咲良さんだった。

こんな朝から電話なんて、珍しい。

手を止めて椅子に座り、通話に出る。

「もしもし。おはようございます。」

『おはよう、朔羅。』

朝だからか、咲良さんのテンションは低めだ。

「なにかありました?」

『ううん。朔羅、元気になったかなって思って。』

わざわざ確認の電話か。

昨日、僕が渡貫の家に行かなかったから、風邪かなんかだと思ったんだろう。

本当は元気だったけど、行けない事情は話せないからそう思っててくれたならありがたい。

咲良さんの言葉に、僕は微笑んで返した。

「元気ですよ。もう何ともないです。」

電話越しに、咲良さんが安心したように息をついたのがわかった。

嘘をつくことに若干の罪悪感を覚えながらも、本当のことはまだ言いたくないと、自分を納得させていた。

『よかった〜。それだけずっと気になってたの。』

咲良さんの声が少し明るくなる。

「そうなんですね。心配かけました。」

この子、これから先こういうことが増えたら心臓持つのかな?

僕のこと心配し過ぎて倒れない?

……それは自意識過剰か。

でもほんとに、ただの風邪だと思っていたのに電話かけてくるって、相当心配されてたんだな……。