ふたつのさくら

「俺、姪っ子が居るんだけどさ、お前と同い年の。そいつが今年からこの学校に通うために俺の家に来てんだよ。」

つまり、その子が外部から来る子だと。

「でもよ、この町に入ってからだから2週間くらいか?ずっと熱出してんだよ。8度から9度くらいの。医者に見せてもただの風邪だって言われるし、解熱剤飲ませても効かないし。」

……なんか似てるなぁ。

「ときどき苦しそうに胸の辺りを押さえたり、肩で息をしたりもしてる。」

本当に似てるなぁ。

「たまに元気になることもあるけど、すぐにまた熱を出して寝込んじゃうんだよ。」

似てるっていうか、同じだね。

「徒野。俺はどうすればいい?このままあいつが弱っていくのをただ見ていればいいのか?」

岡崎先生は僕の目を見て訴えてきた。

そんな回りくどいことしなくても最初から言えばいいのに。

出来ないんだろうなぁ。

だって岡崎祥司は先生で、徒野朔羅は生徒だから。

「岡崎さん。」

僕はあえてそう呼んだ。

「うちで、詳しく話をしましょうか。最初からそのつもりだったんでしょうけど。」

そう提案すると、岡崎先生は悲しそうに笑って答えた。

「……助かるよ。」

そうと決まれば急いだほうがいい。

見た感じ岡崎先生はただの人間だから、姪っ子さんもおそらくそうだろう。

だったら早くしないと手遅れになるかもしれない。

僕は渡貫家に電話をかけながら駆け足で教室に戻った。

『はい、渡貫でございます。』

声で、出たのが奏美くんだと分かった。

奏美くんは咲良さんの付き人兼護衛、まぁお世話係みたいな子だ。

咲良さんがいろいろな意味で危ないから、苦労が絶えないらしい。

「もしもし、朔羅です。奏美くん、今大丈夫です?」

『朔羅さま。大丈夫ですが……何かありましたか?』

奏美くんが少し焦ったような声になる。

僕から電話をかけることなんて滅多にないからだろう。

「大丈夫。咲良さんには何もないですよ。僕に急用が入ったので、咲良さんのお迎えをお願いしたくて。」