ふたつのさくら

僕もご飯を食べ終わり、食器を軽く洗って部屋に戻る。

ちょうど、「僕の」部屋から出てくる凍夜と鉢合わせた。

凍夜は、やべっ、とでも言いたそうな顔をして、わざとらしく口笛を吹きながら歩き出した。

僕はそんな凍夜の腕を掴んで、部屋に引っ張り込んだ。

「ちょ!兄さん!痛い!」

「凍夜くん?何してたのかな?」

言いながらぐるりと部屋を見回す。

特に変わったところはない。

凍夜は気まずそうに目を逸らしているだけで、何も答えなかった。

「……凍夜、正直に答えてね。何してたの?」

少し圧強めに言ってみたけど、やっぱり答えようとしない。

へー、そう。

じゃあこうしようか。

「答えないなら、今日の稽古3倍ね。」

「え?ちょっとそれはやだ!職権濫用だ!」

慌てたように言ってくる。

嫌なら最初っから素直に答えればいいのに。

「じゃあ何してたの?」

「……兄さんの、布団を、嗅いでました……。」

尻すぼみに言う。

凍夜は真っ赤な顔を手で覆って隠していた。

「………………はぁ?!」

何を言ってるのか理解して、大声を出してしまった。

「と、凍夜、さん?なんで??」

いやね?

ときどき、こいつブラコン拗らせてるなー、って、僕も思ってたよ?

拗らせられてる人だけど。

だってどー考えたって、文房具まで全部揃えようとするのはおかしいし。

寝てるときに布団に潜り込んでくるなんてありえないもん。

それを許してる僕もちょっとヤバいかもしれないけど。

でもここまでとは思ってなかったよ?

さすがにね?

凍夜は小さな声で答えた。

「だって……兄さん、いなかったんだもん……。」

え?どゆこと?

「起きて、見に来たら、いなかったから……つい……。」

つい、って……。

「……凍夜、警察行こう。」

「いやー!それだけはご勘弁を!お代官様ー!」

まぁ、こんなこと言ってるけど、ただのじゃれ合いである。

……布団嗅いだことは別。