ふたつのさくら

少し考えて思い出した。

何度も音を立てるレンジの蓋を開け、ぐつぐつと沸騰する味噌汁の火を消した。

「やりすぎた……」

僕の呟きを聞いて、先代は愉快そうに笑っていた。

僕はそれら全てと白米、お箸とお茶をお盆に置いて、先代に声をかける。

「僕、向こうで食べてきます。」

逃げるように台所を出ようとすると、引き止められた。

「朔羅、待ちなさい。」

振り返る。

「……なんですか?」

「なにか、話したいことでもあるんだろう?」

目を合わせないようにして答えた。

「……ありません。」

逃げたい……。

「じゃあなんで1回椅子に座ったんだ?」

「……」

わからなかった。

何も答えない、その場からも動かないでいると、再び先代が口を開いた。

「……最近、辛いんだろう?」

「……はい。」

また先代のななめ前に座った。

正面だと考えを全部見透かされそうだから。

「どう辛いんだ?」

「……前と同じです。頭痛と発熱と、息苦しさ。」

あとは咲良さんをどうしようか、悩んでるくらい。

全部話そうか、まだこのままなのか。

渡貫当主からはこのままでいいとの返事をもらっているが、話すなら、近いうちに話したほうがいい。

僕はご飯を食べながら答えた。

味がしない。

「怪我はしてないか?」

僕が目を合わせないのと同様に、先代も目を合わせない。

お互いに気まずい事情があるから。

「僕は、してないです。凍夜にはさせました。」

「そうか……。」

それだけ言って、先代は杖をついて帰っていった。