ふたつのさくら

……目を覚まして、時計を見れば、午後2時を指していた。

6時間弱……寝過ぎか。

起き上がって布団をたたみ、お茶を飲みに台所に向かう。

冷蔵庫には張り紙がしてあって、「朔羅、起きたら食べてね」と書いてあった。

毎回思う。

別に作らなくてもいいのに。

今日は元気だから食べるけど、元気じゃない日は、食べられない。

無駄になるだけだ。

冷蔵庫を開けて、中を確認する。

肉じゃが、ポテトサラダ、牛肉コロッケがそれぞれ小鉢に入っており、じゃがいもの味噌汁が鍋にそのまま入っていた。

1個言っていい?

「ジャガイモばっかりじゃねーか!」

安かったんかな?じゃがいも。

いやでもこんなに芋ばっかりは、嫌なんですけど。

ありがたいけどね?

作ってくれるのは非常にありがたいんだけど、食べれない日もあるのに作ってくれて嬉しいんだけどね?

いも……。

とりあえず、鍋を取り出してコンロで火にかける。

その間に小鉢を全部まとめて電子レンジに入れた。

「はぁ……」

「何ため息をついているんだ?」

「っ!」

急に聞こえた声に驚いて振り返る。

ここまでは来れるんだ……。

「今日は大丈夫なんだな、朔羅。」

悲しさと虚しさの混ざったような声で、その人は言った。

右手で持っていた杖を机にかけて、冷蔵庫を開く。

麦茶を取り出して机に置き、杖を持って食器棚の方に向かった。

また杖を立てかけて食器棚を開けようとする。

でも片手ではうまくできなそうだった。

「……取りますよ。どれでもいいですか?」

「あぁ。悪いな。」

先代に声をかけて、コップを2つ取り出す。

レンジが音を立てた。

味噌汁が沸騰していた。

先代は台所の椅子に腰掛けていた。

立っているのが辛いんだろう。

僕は2つのコップに麦茶を注いでひとつを先代の目の前に、もうひとつをななめ向かいの席に置いた。

「ありがとう。」

先代が言う。

また、レンジがなった。

ぐつぐつと音がする。

麦茶を冷蔵庫にしまって、椅子に座る。

お茶を飲んだ。

麦茶なのに、なぜか苦かった。

「……朔羅、ご飯はいいのか?」

ひと口飲んで、先代が口を開く。

「……あ。」