ふたつのさくら

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僕は自分の部屋で机に座り、学校から出された宿題をやっていた。

今日は比較的調子がいい。

だけど、強すぎる霊力を目の前にして、堪えられるか分からなかったから、渡貫への挨拶は凍夜に行ってもらった。

これからはそうなりそうだなぁ。

咲良さん、怒るよなぁ……。

前に、言ってたから。

「朔羅が褒めてくれるから、この舞も頑張る」って。

それって裏を返せば、僕が褒めなかったら頑張らないってことですからね?

咲良さん、僕がいなくても頑張ってくださいよ。

「はぁぁぁ……集中できない……。」

大きく息を吐いて、時計を見る。

時刻は午前7時半。

そろそろ凍夜が帰ってくる時間だ。

渡貫当主は手紙を読んだだろうか。

咲良さんはなにも勘付いていないだろうか。

凍夜は余計なことを言っていないだろうか。

心配事がぐるぐると頭の中を回って、目の前のテキストに意識が向かなかった。

ふと、携帯の通知音がなった。

確認すると、咲良さんからで、凍夜が帰ったよ、という内容だった。

それともうひとつ。

『朔羅、大好き!』

どゆこと?

いきなりどうしたの?

とりあえず、『僕も大好きですよ』と返して、携帯を閉じる。

ちなみにこういうことをメッセージで言うことは今までに全くなかった。

直接言うことも滅多にないのに、ほんとにいきなり何?!

え?咲良さん疲れてる?

今日の舞、いつも以上に大変だったの?

心配になるから、いつもと違うことはやめてほしいな……。

まあ、凍夜からは何もないから、特に変なところはなかったのだろう。