ふたつのさくら

「凍夜くん、ほんとに朔羅はただの風邪なの?」

絶対違うと思いながら聞いた。

でも凍夜くんは、さっきの狼狽えようが嘘のように、はっきりと答えた。

「はい。ただの風邪です。そんなに心配なさらなくても、明日には快復してるかと。」

「んー……。」

じっと凍夜くんを観察してみる。

「な、何か……?」

どこも怪しいところはない。

えー、さっきのどもり方は絶対に嘘だと思ったんだけどなー。

「あ、そうだ。」

凍夜くんは何かを思い出したようにそう言って、持ってきてたカバンを漁り出した。

「あったあった。」

そう言いながら、封筒を私とお母さまにそれぞれ渡す。

手紙……かな?

「兄さんからです。咲良さんのは特別な条件下でしか開かないようにしていると言っていました。どんな条件かは知りませんが……。」

「ありがとう……。」

不思議に思いながらそれを受け取る。

A4の紙が三つ折りで入るサイズのその封筒の表面には「咲良さんへ」と、朔羅の丁寧な字で書いてあった。

なんで手紙……?

直接でも携帯でもなくて、なんで手紙……?

しかも特別な条件下でしか開かないってなに?!

試しに封を切ろうとするけど、鋼のようにびくともしなかった。

一体何をどうしたらこんなことができるんだ……?

お母さまのはそんな細工はされていないようで、普通に開けて読んでいる。

気になって覗こうとすると、凍夜くんが間に入って遮った。

「ダメですよ。他人宛の手紙を無闇に見るものじゃありません。」

凍夜くんはどこか焦ったように言った。

言ってることはもっともだけど、その様子に違和感を覚えた。

「……そうね。ごめんなさい。」

突っ込んだところで、またうまく躱されるだけだろう。

だから素直に引っ込んだ。

……ん?

8歳の子供に言い負かされる私って……。

あれ?目から汁が。

……出てないんですけど。