ふたつのさくら

……時刻は朝5時。

まだ日も昇りきってない時間に、私と母である渡貫家の当主は舞台に立っていた。

別に2人で舞う必要はないんだけど、私の経験と、それぞれの負担を減らすために、2人で舞う。

舞台の脇で楽団が演奏を始める。

私たちはそれに合わせて舞った。

しなやかに、緩やかに、艶やかに。

優雅に、丁寧に、美しく。

月に1度のこの舞は、一般の人も見れるようになっているし、徒野の当主も見に来る。

霊力が高まっている状態になって、妖怪が湧いて出るかもしれないから。

その護衛。

終わったら朔羅にいっぱい褒めてもらおう!

そんなことを思いながら踊った。

後半になるにつれて力が入らなくなってくる。

だんだんと頭がぼんやりとしてきて、足元も危うくなる。

それと反比例して、空間に力が満ちていくのを感じる。

結界が修復されている証拠だ。

倒れそうになるのを踏ん張って、約1時間、最後まで踊りきることができた。

拍手が響く中、一礼して、舞台裏へと捌けた。

部屋に戻り、重くて暑苦しい白拍子の衣装を脱ぎ捨てる。

動きやすい洋服を着て、手早く白拍子の衣装を片付けた。

そして急いで客間に向かう。

扉を開けて、部屋を出たところで奏美が待っていた。

「あ、奏美、おはよう。」

いつでもどこでも、挨拶は大事よね。

私が笑って挨拶をすると、奏美はお辞儀をしながら答えた。

「おはようございます、お嬢様。客間で当主様がお待ちです。」

「分かってるわ。行きましょう?」

奏美は頷いて、私の前を歩き出した。

私の迷子防止だ。

自分の家でも迷子になるって、どれだけ方向音痴なんだか……。

でもそろそろ自分の部屋から客間までの道は覚えたよ。

……多分。