ふたつのさくら

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5月初めの日曜日。

私はいつもの動きやすい洋服じゃなくて、重くて動きにくい白拍子の衣装に身を包んでいた。

白拍子とは、平安時代の末期から鎌倉時代にかけて出てきた、今様を謳ったり、舞をしたりする人のことだ。

主に貴族の屋敷に出入りして、そこにいる人を喜ばせる。

中には、屋敷の主人と恋仲になった白拍子もいるとか。

私たち渡貫は、特別な舞を舞うことによって人の世界と妖怪の世界を隔てる境界に力を与える。

普段の生活ではこの格好は遠慮したいけど、舞うときに限っては、これでも動きやすいのだ。

毎月初めの日曜日が、私たちのお役目の日だ。

ほぼ毎日働き詰めの徒野と比べれば楽な方かもしれないけど、衣装が重いから嫌なんだよなー。

あと単純に1回の疲労感が半端ない。

浅見さんが怖いから言わないけどね。

浅見さんは、私の指導係。

礼儀や舞の指導はもちろん、たまに勉強を教えてくれたりもする。

優しいときは優しいけど、怒ると本当に怖いんだよね。

もう一度、鏡を見て自分の姿を確認する。

……よし、衣装は完璧、化粧もおっけー。

それじゃ今日も、サクッと終わらせていきますか。