ふたつのさくら

大人たちは何も言わない。

僕の好きにしていいらしい。

じゃあ思う存分好きにさせてもらおう。

「朔羅?どういうこと?」

咲良さんも動こうとはせずに、本当に不思議そうな声で聞いてきた。

もうちょっと危機感的なものを持った方がいいと思いますよ。

「婚約の話です。」

言った瞬間、咲良さんの顔が赤くなった。

「まだこれから先、いろんな人に出会うと思います。僕よりいい人もいっぱいいると思います。それでも、僕に決めていいんですか?僕でいいんですか?」

僕は咲良さんに笑っていて欲しいだけ。

幸せになって欲しいだけ。

君の願いは、できるだけ叶えてあげたいと思う。

だから、君が望むなら、僕はそうしよう。

君のために、死ぬ気で耐えてみせる。

でも少しでも迷っているなら、僕は手を引こう。

咲良さんはゆっくりと話し出した。

「朔羅。私は朔羅でいいなんて言ってないよ?」





……咲良さんの上から離れようとした。

でもそれは、咲良さんが首に腕を巻きつけてきたことで阻止された。

「咲良さん……?」

「朔羅がいいの。朔羅じゃないと、やだ。」

「っ……」

奥歯を噛み締め、ふっと緩める。

「……まったく、わがままなお嬢さまですね。」

咲良さんに笑顔を向けた。

「わかりました。じゃあそうしましょう。」

僕がそういうと、咲良さんはポカンとしていたが、腕を緩めてくれた。