ふたつのさくら

……当主の悩みごとが何かわからないまま、僕の誕生日、お披露目の日がやって来た。

弟の凍夜も、8月中に無事に生まれ、僕と当主は渡貫の家を訪れた。

黒い羽織に、灰色の袴。

歩き慣れない服装で、渡貫当主の待つ客間へと入った。

部屋の中には、当主とその夫、そしてここ最近で見慣れた、かわいらしい少女が座っていた。

僕と父親はその正面に座り、頭を下げて挨拶をする。

「徒野朔羅と申します。本日はご挨拶に伺いました。」

「はい。あなたのますますの活躍を期待しています。」

そんな感じの、まぁお決まりの言葉を言い合ったあとは、自由だ。

だからなのか、僕と咲良さんは早々に部屋を出され、2人で遊んでいるように言われた。

「朔羅、何したい?」

隣の部屋で、大人たちの話し声がうっすらと聞こえる中、咲良さんは聞いてきた。

「何がいいですかね。何があるんですか?」

「うーんとね、いろいろあるよ?こっち!」

僕の質問にそう答えて、咲良さんは僕の手を引いて歩き出した。

広い家の中を何度か迷いながら、目的地についたようだ。

余談だが、咲良さんの方向音痴は自分の家でも常に発揮されていて、いまだに自力で行けない部屋があるらしい。

そういうところ、すごくかわいいな。

それはそうと、咲良さんは部屋の襖を勢いよくスライドさせた。

スパーン!と大きな音が鳴った。

「そんなに強くやらなくてもいいんじゃないですか?」

「……てへっ!」

かわいい。

部屋の中には勉強机やランドセル、ベッドなどが置いてあった。

咲良さんの部屋なのだろう。

咲良さんはベットの下の引き出しを開け、中を見せてくれた。

「この辺なら2人で遊べる?」

おままごとセット、着せ替え人形、ビーズアートなどなど。

確かに2人で遊べるかもしれないが、女児向け……。

まぁ仕方ない。

咲良さんの部屋なんだから、そうなるのは当たり前だ。

でもちょっと、おままごとは遠慮したい……。

というわけで、僕は隅の方に押し込められていたトランプを指差した。

「神経衰弱でもやりましょうか。」

「うん!」

咲良さんは元気よく頷いた。

いちいちかわいい。