ふたつのさくら

今は4月。

坂の傍には何本もの桜が並んでいて、花びらがまるで僕らの進級を祝福するように、風に舞っていてた。

「ねぇ朔羅、今日の放課後は予定ある?」

歩きながら咲良さんが声をかけてきた。

「放課後ですか?今日は……見回りもないので、空いてますよ。」

僕がそう答えると、咲良さんはふわりと笑った。

「よかった!じゃあ、遊び行こ?」

咲良さんの提案に少し考える。

今日は高校初日だから午前帰りだし、僕も一緒に行くなら、まあ問題ないか。

「いいですよ。」

僕が答えると咲良さんは飛び上がって喜んでいた。

かわいい。

そうやって話しながら5分ほど歩いて、やっと校舎が見えてくる。

咲良さんは左に向かい、僕はまっすぐ進んで、止まった。

「……咲良さん、そっちは中等部ですよ。」

呆れながら声をかける。

咲良さんは立ち止まって少し考えたあと、顔を真っ赤にして僕の手を引いて早足で歩いた。

そして低い声で聞いてくる。

「……朔羅、何も見てないよね?」

……そういうのを見ると、イジワルしたくなっちゃうよね。

「はい。何も見てないですよ。全く。咲良さんが中等部の靴箱に行こうとしたことなんて、全然知りませんから。」

「ん〜朔羅ぁ!」

笑いながらいうと、咲良さんは顔をさらに赤くして、僕の胸をぽかぽか叩いてくる。

全然痛くない。

てかかわいい。

「はいはい、いいんですよ咲良さんはそれで。僕がいますから。」

少しかかんで目線を合わせて、頭を撫でながら伝える。

手は、ちょっとまとめさせてもらった。

「おーい、ダブルさくら、朝からいちゃついてんじゃねーぞー。」

「うぐ……」

横を通りかかった同級生の男子にそう言われる。

……恥ずかしい。

他の生徒にもクスクスと笑われてしまった。

「……さ、咲良さん。行きましょうか。」

「……ん。」

2人して顔を赤くしながら教室に向かった。