ふたつのさくら

咲良さんの霊力が強いことは、当時から噂になっていた。

歴代でもトップクラス、初代の双子の女児にも匹敵するほどだろう、って。

咲良さんは、僕と同じ人種だ。

自分の身を滅ぼすほどの、強すぎる力を持って生まれた人。

咲良さんはその強すぎる霊力から妖怪に襲われやすく、僕は自分の中の妖怪に「自分」を奪われる。

なのに、片方は元気に外を出歩いていて、もう片方は部屋から出ることもできない。

越えられない壁が、そこにはあった。

あぁ、思い出した。

僕、泣いたんだ。

その日の夜。

「何で僕だけ」、「あの子は平気なのに、何で僕はダメなんだろう」って。

だから僕は死ぬほど努力した。

その悔しさをバネに、自分も普通になってやろうって。

自分の中に巣食う謎の力を抑えるために。

平気じゃなくても平気に見えるように。

時に大人の目を盗んで自分の腕を切りつけたりもした。

その度に、そんなことはもうやめるように両親から言われたけど、やめなかった。

やめることが、できなかった。

それが、自分を押さえつける1番楽な方法だったから。

「痛み」というものが、飲み込まれそうな意識を引き戻すのに非常に有効だったから。

余分な話をすると、それで死ねたらいいな、なんていう淡い願望もあった。

だって死ねたら、消えることができたら、全部終わるじゃん。

この苦しさも、修行の辛さも、全部感じなくて良くなるじゃん。

普通になりたいと望んだ裏で、そんなことを思っていた。