ふたつのさくら

……僕が咲良さんを初めて見たのは、咲良さんの5歳のお披露目のときだ。

徒野、渡貫の両家は、5歳の誕生日にお披露目と称して、挨拶回りをする。

両方の本家には直接伺い、それぞれの分家は集める。

丸1日かけて行われる、宴みたいなものだ。

3月末、梅の花から桜の花に移り変わる時期に、真っ赤な着物を着て、自分と同じ韻をもつ少女は、渡貫当主である母親と共にやってきた。

「渡貫咲良ともおします!このたびはご挨拶におおかがいしました!」

舌足らずな口調で、元気に話す声が部屋まで聞こえてきた。

僕は何してたんだっけ。

あんま覚えてないけど、多分布団にいた。

今と同じ。

当時はまだ自分の力をうまくコントロールできなくて、部屋から出ることは滅多になかったから。

だから僕だけお披露目は8歳だ。

咲良さんも凍夜も5歳なのに、僕だけ8歳。

まあそんな話は今はどうでもいいんだよ。

とにかく、部屋まで咲良さんの声が聞こえてきた。

それで、どんな子なんだろうなって気になって、窓から覗いたのが最初だ。

会ってはいない。

あのとき直接会っていたら、僕も咲良さんも、多分ここにはいないだろうね。

素直に可愛い子だなって思った。

そのとき咲良さんはまだ髪を伸ばしていて、サラサラの黒髪が風に靡いていた。

今は切っちゃったけど、長髪の咲良さんも素敵だったな。

あと、羨ましかった。

妬ましかった、憎らしかった。

……格差を目の当たりにした、5歳児の醜い嫉妬だ。