ふたつのさくら

時刻は6時前。

怖いこともあったけど、たくさん遊べたし、朔羅の初めて見る顔も見れたし、満足だ。

あとはこれを喜んでくれるかどうか……。

「朔羅。」

玄関で帰ろうとする朔羅に声をかける。

「何ですか?」

段差に座ってカバンを漁る。

朔羅はそんな私の様子を不思議そうに眺めていた。

あれー?あ、あったあった。

「はい。今日1日、ありがとう。」

プレゼントを渡しながら言うと、朔羅はフリーズした。

「……朔羅?」

声をかけても、目の前で手を振っても反応はない。

え?なに?朔羅、壊れた?電池切れ?

どうすればいいの、これ。

てか朔羅、息してる?

「さーくらー?」

「……はっ!死ぬとこだった。」

「生きててよかったね。」

どうやら死の淵が見えたらしい。

こっちに戻ってきた朔羅は、嬉しそうな、泣きそうな顔をして、ガバッと抱きついてきた。

「咲良さん大好きです!かわいい!ほんとかわいい!!今日行ってよかった!ずっと、ずっと!大好きです!!」

潰れそうになるほど強く抱きしめているが、潰れないように最大限注意してくれてる。

無駄に紳士!

「うん、朔羅わかったから。私も大好きだよ。」

そっと朔羅を抱きしめる。

かわいい、大好きと騒いでいた朔羅だが、急に静かになった。

やっと落ち着いたかな、と思って体を離そうとするけど、朔羅はそれを引き留めるように力を強めた。

「朔羅……?」

「ごめん。もう少しこのままでいさせてください。」

朔羅の声が震えていた。

背中を撫でる。

「……咲良さん、僕はずっと大好きですから。例えあなたが僕のことを嫌っても、僕だけはあなたを愛し続けます。」

やっと聞き取れるほどの小さな声で、朔羅が言った。

「……朔羅?何かあった?」

「いいえ。何もないです。」

朔羅は笑顔を向けてきた。

「ただ言いたくなっただけですね!」

諦めたような笑顔だった。

「これ、ありがとうございます!大事にしますね。」

そう言って、朔羅は駆け足で帰ってしまった。

「何だったんだろ……。」

「まったく、騒がしい人ですね。」

後ろからそう声をかけてきたのは奏美だった。

振り返ると奏美は丁寧にお辞儀をした。

「おかえりなさいませお嬢様。本日は楽しめましたか?」

「うん!とっても!」

そうして、奏美に今日あったことを話しながら私の1日は終わった。