ふたつのさくら

床を見ると……見なくても気づいてたけど……数人の男が折り重なるようにして伸びていた。

朔羅はそれを踏まないようにしながら歩き出した。

「……あれ、朔羅がやったの?」

聞いてから、朔羅以外にありえないじゃん、と思った。

朔羅は前を見たまま答えた。

「んー、半分くらいは僕がやりましたけど、2人ほどは自滅ですよ?」

へーそうなんだー。

私が納得したような顔をすると、心配そうな顔で聞いてきた。

「僕のこと、怖いですか?」

「え?なんで?」

反射で聞き返した。

朔羅を怖がる要素がどこにあるのか、全くわからなかった。

朔羅は足を止めて、上を見上げた。

心なしか肩も震えている。

「はぁ〜……」

なぜか巨大なため息をつかれた。

「え?何そのため息?!今の会話で呆れられるの?!朔羅謎すぎるでしょ!!」

「違いますよ。」

朔羅は嬉しそうに答えた。

「ただ、安心しただけです。咲良さんはやっぱり咲良さんだなぁ、って。」

「は?ちょっと朔羅!どういうこと?説明して!」

朔羅は知らないふりして歩き出した。

結構耳元で騒いでると思うんだけど、よく無視できるね……。

「お、いいところにいるじゃないですか。」

それどころか全く別の、よくわからないことを呟いてどこかへと歩き出す。

朔羅の行く先を見ると、1人の警備員がいた。

「すいませーん。」

朔羅は私を下ろすことなく、警備員さんに声をかける。

「さっきこの子が、あの服屋の横の非常階段前で襲われてて、男が数人、そこに倒れてるので何とかしてください。」

丸投げ……。

だけどさすがは警備員さん。

こんなことでは動揺せずに、無言で頷いて現場へと向かった。

朔羅はそれを見届けて、私に声をかけた。

「帰りましょうか。」