ふたつのさくら

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S県西部にある小さな町。

土地の大半が森に覆われ、大きな川が町を横断する。

コンビニやスーパーはないし、バスは1日2本、電車もローカル路線で駅は町内にたったの2つ。

そんな、圧倒的田舎な町。

その町の中心部にある丘の上に、僕の通う「公立海琳学園」はあった。

中高一貫校で、生徒数は全部合わせて約300人。

1学年に2クラスしかない、町内唯一の中高生のための小さな学舎だ。

僕は学園高等部の1年2組に所属する生徒。

今日も彼女に会うため、学校へ向かう。

学校のある丘のふもと、郵便局の前が僕らの待ち合わせ場所だ。

いつも僕が先に着いて、少ししてから彼女が来る。

「朔羅、おはよ!」

小説を読みながら待っていると、後ろから声をかけられた。

鈴が鳴るような、明るい声。

大好きで、大好きな、彼女の声。

本を閉じて顔を上げる。

「咲良さん、おはようございます。」

ショートカットのかわいらしい少女が、下から覗き込むように僕を見ていた。

かわいい。

同じクラスの渡貫咲良さん。

僕の、婚約者だ。

「それじゃ、行きましょうか。」

「うん!」

彼女が頷くのを確認して、ゆっくりと歩き出す。

手は繋がない。

別に隠してるわけじゃないけど、咲良さんがかわいすぎて、僕が我慢できなくなるから。

まあ、それだけじゃないんだけど。