ふたつのさくら

気まずい空気のまま、オムライスを口に入れた。

「んー!おいしい〜!」

オムライスはそんな雰囲気を壊すような、優しい味だった。

口に入れた瞬間ふわふわの卵がとろけて、その甘さとケチャップの酸味が混ざり合う。

もう、とにかく美味しい!

朔羅も一口食べて、感想を漏らした。

「うん、本当に美味しいですね!」

特段話すこともなく、静かに食べ進める。

あっという間に食べ終わって、お会計。

「ご一緒でよろしいですか?」

店員さんが聞いてくる。

「あ、別で……」

「一緒でお願いします。」

私の言葉に被せて、朔羅が言った。

「かしこまりました。」

店員さんも朔羅の言葉に返事して、2人分の会計を済ませてしまった。

店を出て、人の邪魔にならないところで朔羅に声をかける。

「朔羅、お金払うよ。」

「いえ、いいんですよ。お詫びも兼ねて。」

朔羅は笑って言う。

「でも……。」

「もー、咲良さんは律儀ですね。僕がそうしたいからしてるだけです。」

頭を撫でながら言ってくる。

そうは言っても、気になるものは気になるのだ。

「……」

「……よし。からかったことは無かったことになったぞ。」

朔羅が小声で言った。

「……朔羅、狙いはそれね?!私はそんな安い女だと思われてたの?!」

朔羅に詰め寄るように、断固抗議する。

「げ……聞こえてたんですか?」

しっ……らじらしい!

「聞こえてたも何も、わざと聞こえるようにして言ったでしょ!!」

この人、わざわざ私の頭を引き寄せて、耳元で言ったんですよ!

絶対わざと聞かせたでしょ!

「あはは……」

笑ってどうにかなると思ってるなら大間違いだからね!

「いいもん!奢られてあげる。それも無かったことにしてあげる。でも、次はないからね!」

後ろを振り向きながら言い放った。

かなり上から目線だけど、朔羅にはこのくらいがちょうどいいのだ。

「……はい。楽しみにしてますね。」

ほら、こんなこと言う。

声は本当に楽しそうだった。

でも私は後ろを向いていたから。

朔羅が、とても悲しそうな顔をしていたことに気づかなかった。