ふたつのさくら

期間限定のイベントだからか、大きな魚はいなくて、小魚や、ヒトデなどの移動が楽そうなものが多かった。

「あ!朔羅、チンアナゴだって!うねうねしてるー!」

水槽の前で屈んで観察したり。

「ほわ!触った!今、チョンって触れたー!」

ふれあい水槽で魚と触れ合ったり。

「へー、エイってこんなに大きいんだねー!」

スクリーンに映し出された映像を見たり……。

とにかく朔羅を連れ回した。

朔羅はそのひとつひとつに笑顔で対応してくれた。

「朔羅は見たいのある?」

私ばっかり楽しんでて、朔羅が楽しめていないんじゃないかと心配になった。

でもそれはいらない心配だったようで、朔羅は本当に楽しそうに答えた。

「いいえ。咲良さんが見たいのを好きなだけ見てください。こういうところ、滅多に来れないでしょう?」

それが嬉しい反面、ちょっと申し訳なくなる。

朔羅は私のために色々してくれる。

じゃあ私は?

朔羅のために何かできてる?

でも朔羅は私がそう思うことを望まない。

だから私は思わない。

何かしようと思わなくていい。

ただ元気に過ごすだけで、それだけでいい。

「……そうだね。じゃあ最後、もう一回チンアナゴ見に行こ!」

2人でチンアナゴの展示コーナーに行く。

水槽の前に屈んで、中の様子をじっと見た。

たくさんのチンアナゴたちが、砂から顔を出しては引っ込めて、かと思えばまた出してと、自由に動いている。

中には体を全て砂から出して、自分のいる場所を移すものもいた。

ずっと見てられるなぁ。

……しばらく眺めて満足したので、振り返って朔羅に声をかける。

「ありがとう、朔羅。もう十分。」

「そうですか。」