ふたつのさくら

……2人でゆっくり歩いて、駅前の百貨店に入る。

多分ここが目的地なんだろう。

「どうします?雑貨屋、行きますか?」

「んー、どうしよっかな……。」

館内マップを見ながら話す。

百貨店というだけあって、いろいろな商品を扱うお店が入っていた。

雑貨屋だけじゃなく、服屋や飲食店、キャンプ専門店、タオル専門のお店なんかもあった。

朔羅が少し壁に歩み寄った。

「……それとも、今日は展示スペースでアクアリウムをやってるみたいなので、それを見に行きますか?」

朔羅がそこにかかったポスターを見ながら言った。

ポップな字で「アクアリウムへようこそ!」と書いてあり、その下にはクマノミの絵があった。

なんか、朔羅が悲しそうに見える。

朔羅が沈んでるの、やだなー。

「……行きたい?」

朔羅の手を握る力を強めた。

朔羅がどこかに行っちゃいそうだから。

「……咲良さん、僕はあなたのそばにいてもいいんですか?」

???

何がどうしてそうなった???

「さく……」

「アクアリウム行きましょう?」

そう言った朔羅はいつも通りだった。

いつもと同じ、優しくて明るい声。

いつも通りすぎて、怖くなった。

朔羅が無理をしているんじゃないか。

このままじゃ朔羅が潰れてしまうんじゃないか。

何も言わず、どこかに行ってしまうんじゃないかと、ものすごく怖くなった。

朔羅は手を引いて歩き出したが、私はその場に縫い付けられたように、足を進めることができなかった。

手が解ける。

「咲良さん?」

朔羅が戻ってきて、また手を握った。

「嫌、でした……?」

目線を合わせて聞いてくる。

私は首を振った。

「よかった。じゃあ行きましょ?」

本当に嬉しそうに笑って、また私の手を引いて歩き出す。

今度は一緒に歩けた。