ふたつのさくら

そんなことを話していると、玄関の方から声が聞こえた。

どうやら朔羅が来たらしい。

「あ、お嬢様、僕ちょっと行ってきます。」

「うん。」

奏美が部屋を出て丁寧に襖を閉める。

奏美は今11歳。

なのに、動作のひとつひとつがものすごく綺麗で、非の打ち所がなかった。

部屋でしばらく待っていると襖が薄く開いて、声をかけられる。

「お嬢様、朔羅さまがいらっしゃいました。」

「ありがとう、奏美。下がっていいわ。」

そう言うと奏美はもう一度綺麗なお辞儀をして、その場から離れた。

奏美がいなくなったことを確認して、朔羅に飛びつく。

「朔羅!おはよう!」

「……」

受け止めてはくれたけど、朔羅からの返事はなかった。

やっぱり、変だった……?

「朔羅……?」

心配になって朔羅の顔を見ようとすると、きゅっと優しく抱きしめられた。

「かわいいです……。」

朔羅が呟いた。

「咲良さん、とってもかわいいです!」

そう言って、蕩けるような笑みを向けてきた。

それだけで私は満足だ。

私は朔羅をぎゅっと抱きしめて、胸に顔を埋めた。

「良かったー!変じゃないか、ずっと心配だったの。」

そう言うと、朔羅は頭を撫でてくれた。

髪が乱れないように、そっと。

そして、目線を合わせて言ってきた。

「咲良さんなら何を着ても似合いますよ。絶対に。」

あー、私の恋人は今日も素敵です!

「それじゃ時間も限られていますし、早速行き……」

朔羅は中途半端に言葉を切って、顎に手を当てて何かを考えているようになった。

「朔羅、どうしたの?」

「咲良さん、やっぱり行くのやめません?」

「ほへ?!」

この上なく真剣な声で言われたから、変な声出ちゃった。

「この服、やっぱり変……?」

変って言われたらショックで死ねる。

「いえ。とってもかわいいです。服もかわいいんですけど、それよりもそれを着てる咲良さんが。」

あー、それなら良かった。

ちょっと恥ずかしいけど。

「じゃあなんで……」

「かわいいから、行きたくないんです。」

え?何?どゆこと?