ふたつのさくら

誤魔化すことはできる。

「全然?」って、無かったことにはできるけど。

それじゃ先生は納得しないだろう。

「……辛くない、って言ったら嘘になる、って感じですかね?まだマシなほうです。」

「そうか……」

何を考えているのか、全然分からない。

僕は先生じゃないから。

「でも、だからって特別扱いはやめてください。慢性的な頭痛も、不定期的にやってくる死にたくなるほどの苦痛も、全部僕の日常ですから。」

「……じゃあ、学校で突然調子が悪くなることはあるのか?」

チャイムが鳴る。

ちょうどいい。

考えたくないことだから。

「……教室、戻らないと。」

椅子から立ち上がり、部屋から出ようとする。

「待て。まだ質問に答えてもらってないんだけど?」

岡崎先生は立ち上がることなく、声をかけた。

その声に扉を開けようとしていた僕の手は止まり、行き場を失ったそれは、下に垂れ下がった。

振り返ることなく答える。

「……可能性はある、とだけ言っておきます。」

扉を開けて振り返る。

「それじゃ先生。遅くならないうちに出席取りに来てくださいね。」

「あ、おい!」

そのまま早足で相談室を出た。

「……俺は、そんなに頼りないか……?」

僕のいなくなった部屋で、岡崎先生はくしゃりと髪を握り、静かにつぶやいていた。






……早足で廊下を歩く。

大丈夫、もし仮にそうなったとしても、死ぬ気で耐えるだけだから。

誰にもバレないように。

誰にも悟られないように……。

教室の扉の前で一度深呼吸をする。

そして扉を開けようとすると、先に中から扉が開かれた。

「あ、朔羅!どこ行ってたの?」

咲良さんだった。

多分チャイムがなって5分くらい経つのに、先生が来ないから呼びに行くところなんだろう。

咲良さんは去年、クラス委員だったから。

「ちょっと先生と話していただけですよ。もうすぐ来ると思うので、呼びに行く必要はないかと。」

僕がそう言ったところで、後ろから岡崎先生がやってきた。

「おー遅れてごめんな。2人とも席戻れ。」

僕らが席についたのを確認して、先生は出席を取り始めた。

また、我慢の1日が始まる。