――――――――――――
『咲良さんへ
おはようございます。
こんにちは、ですかね?
それともこんばんはですか?
いやもっと相応しいのがありますね。
お久しぶりです、咲良さん。
あなたがこの手紙を読んでいるということは、僕はもうあなたの横にはいられなくなっているんでしょうね。
……なんて、よくある出だしですけど。
でも多分、部屋にこもって、咲良さんに会うこともなく、ひっそりと死んだあとなんだと思います。
最初にひとつ、謝らせてください。
僕、こうなることが分かっていました。
あなたと婚約したその日から、心のどこかで、こんな未来が来るであろうことを理解していました。
当主になったときに、確信に変わりました。
その上で、あなたと過ごしていたんです。
最低ですね。
あなたに隠し事して、何も知らせずに、勝手に残していくなんて。
すいません。
こんな僕をどうか許してください。
今これを書いているのが4月末なんですけど、そっちはどうですか?
僕、どれだけ耐えたんですか?
堪え性がないから、案外5月末だったりして。
分からないですね。
だから僕にとっての「今」の話をしましょうか。
ところで咲良さん、あなたは僕が人間じゃないって知ってますか?
言おうか言わまいか、ずっと悩んでるんですよ。
いつか話すつもりではいるんですけど、それが死んだあとなのか、その前なのか……
どうなんですかね。
まあ、どっちでもいいでしょう、そんなこと。
いつ知らせようと、もう僕いないんだし。
そう、それで、僕、人じゃなくて、妖怪なんです。
どうです?驚きました?びっくりしました?
…それとも幻滅しましたか?
僕のこと、嫌いになりました?
これで嫌いになってくれるんだったら、早く話せばよかったな。
あなたに嫌われたら、僕はなんの悔いもなく向こうに行けるので。
あなたも、嫌いなやつが死んだところでどうとも思わないでしょう?
でも多分、あなたは嫌ってくれない。
怖いとは思っても、嫌ったり、拒絶したりはしないんでしょうね。
優しいから。
ねぇ咲良さん、妖怪ですよ?
あなたを殺して喰らう、あの恐ろしい妖怪なんですよ?
あなたの1番近くに、あなたにとっての1番の敵がいたんですよ?!
僕を嫌いになってください。
罵倒してください。
この最低のクズ野郎、お前が死んで清々したって、言ってください……。
嫌ですか?そうですか。
僕、もう限界が近いんです。
時々、あなたが食べ物にしか見えなくなる。
必死で耐えていても、腹の底でずっと言ってるんですよ。
「うまそうだ。」って、「食べてしまおう」って。
あなたと笑顔で話している裏で、そんなこと思ってるんです。
そんな自分に耐えられない。
これがどんどんひどくなって、もう無理ってときに自殺するんだろうな。
それまでに僕はあなたを諦められるかなあ?
いやー、できないなあ。
言ったでしょ?
「あなたにどれだけ嫌われようと、僕はあなたを愛し続ける」って。
それだけ、僕はあなたに囚われているんです。
あ、そういえば言ってなかったですね。
ネックレス、ありがとうございます。
とっても素敵で、可愛らしくて、嬉しかったです。
あれ、お揃いですよね?
これつけてまた2人で出かけよーね!
ってことですよね。
ごめんなさい。
僕にはもう、そうできるだけの自信がないんです。
あなたといると、自分がおかしくなる。
苦しくなって、頭が痛くなって、倒れそうになるんです。
実際、あのあと体調を崩して、丸一日寝込みました。
月曜日には何事もなかったように学校行ってたでしょ?
あれも、実はかなり無理してました。
菖蒲が止めるほどです。
凍夜が泣きながらしがみついてくるほどです。
言っときますけど、あなたのせいじゃないですからね?
全部、僕が決めて、僕が行動したことです。
絶対に自分を責めないでください。
責めるなら、あれだけのことでダメになる、弱い僕を責めてください。
これから先、僕はあなたを避けるようになると思います。
もしかしたら酷いことを言うかもしれない。
本当に言ったらどうしよう。
それだけで死ねる。
でもギリギリまでは生きますよ。
正気でいられるうちは、一緒にいたいですから。
わがまま、許してくれますか?
あなたといるうちは、死ぬ気で正気を保ちますから。
どれだけ辛くても、苦しくても、微塵も感じさせずに耐えてみせますから。
絶対に、あなたを傷つけません。
あなたは何の心配もせず、いつも通り過ごしてくれればいいんです。
あ、僕死んでるんでしたね。
ごめんなさい、今は生きてるもので。
あなたがこれを読むのは、僕が死んだあと。
もう、いないんですね。
これから僕がどうなるか分からないから、今書いてるだけで。
よし、言いたいことは大体書いた気がする。
これ以上書いてると、余計なことまで書きかねないので、この辺で終わりにしときますね。
それじゃ最後に。
咲良さん。
あなたに会えて、あなたと過ごせて、あなたを愛することができて、あなたに愛されて。
僕は、とっっっっっても!
幸せです!!
ありがとう。
僕の人生にいてくれて。
あなたがいなかったら、僕はもっと早くに自分を見限っていた。
あなたがいたから、僕はここまで生きることができた。
どうか、僕のことは忘れて、自分の幸せを掴んでください。
絶対に、追ってこようなんて思わないでください。
悲しいですから。
それでおばあちゃんになってからこっちに来て、覚えててくれるなら会いましょう。
素敵な時間をありがとう。
親愛なる渡貫咲良様、九尾の狐徒野朔羅より』
『咲良さんへ
おはようございます。
こんにちは、ですかね?
それともこんばんはですか?
いやもっと相応しいのがありますね。
お久しぶりです、咲良さん。
あなたがこの手紙を読んでいるということは、僕はもうあなたの横にはいられなくなっているんでしょうね。
……なんて、よくある出だしですけど。
でも多分、部屋にこもって、咲良さんに会うこともなく、ひっそりと死んだあとなんだと思います。
最初にひとつ、謝らせてください。
僕、こうなることが分かっていました。
あなたと婚約したその日から、心のどこかで、こんな未来が来るであろうことを理解していました。
当主になったときに、確信に変わりました。
その上で、あなたと過ごしていたんです。
最低ですね。
あなたに隠し事して、何も知らせずに、勝手に残していくなんて。
すいません。
こんな僕をどうか許してください。
今これを書いているのが4月末なんですけど、そっちはどうですか?
僕、どれだけ耐えたんですか?
堪え性がないから、案外5月末だったりして。
分からないですね。
だから僕にとっての「今」の話をしましょうか。
ところで咲良さん、あなたは僕が人間じゃないって知ってますか?
言おうか言わまいか、ずっと悩んでるんですよ。
いつか話すつもりではいるんですけど、それが死んだあとなのか、その前なのか……
どうなんですかね。
まあ、どっちでもいいでしょう、そんなこと。
いつ知らせようと、もう僕いないんだし。
そう、それで、僕、人じゃなくて、妖怪なんです。
どうです?驚きました?びっくりしました?
…それとも幻滅しましたか?
僕のこと、嫌いになりました?
これで嫌いになってくれるんだったら、早く話せばよかったな。
あなたに嫌われたら、僕はなんの悔いもなく向こうに行けるので。
あなたも、嫌いなやつが死んだところでどうとも思わないでしょう?
でも多分、あなたは嫌ってくれない。
怖いとは思っても、嫌ったり、拒絶したりはしないんでしょうね。
優しいから。
ねぇ咲良さん、妖怪ですよ?
あなたを殺して喰らう、あの恐ろしい妖怪なんですよ?
あなたの1番近くに、あなたにとっての1番の敵がいたんですよ?!
僕を嫌いになってください。
罵倒してください。
この最低のクズ野郎、お前が死んで清々したって、言ってください……。
嫌ですか?そうですか。
僕、もう限界が近いんです。
時々、あなたが食べ物にしか見えなくなる。
必死で耐えていても、腹の底でずっと言ってるんですよ。
「うまそうだ。」って、「食べてしまおう」って。
あなたと笑顔で話している裏で、そんなこと思ってるんです。
そんな自分に耐えられない。
これがどんどんひどくなって、もう無理ってときに自殺するんだろうな。
それまでに僕はあなたを諦められるかなあ?
いやー、できないなあ。
言ったでしょ?
「あなたにどれだけ嫌われようと、僕はあなたを愛し続ける」って。
それだけ、僕はあなたに囚われているんです。
あ、そういえば言ってなかったですね。
ネックレス、ありがとうございます。
とっても素敵で、可愛らしくて、嬉しかったです。
あれ、お揃いですよね?
これつけてまた2人で出かけよーね!
ってことですよね。
ごめんなさい。
僕にはもう、そうできるだけの自信がないんです。
あなたといると、自分がおかしくなる。
苦しくなって、頭が痛くなって、倒れそうになるんです。
実際、あのあと体調を崩して、丸一日寝込みました。
月曜日には何事もなかったように学校行ってたでしょ?
あれも、実はかなり無理してました。
菖蒲が止めるほどです。
凍夜が泣きながらしがみついてくるほどです。
言っときますけど、あなたのせいじゃないですからね?
全部、僕が決めて、僕が行動したことです。
絶対に自分を責めないでください。
責めるなら、あれだけのことでダメになる、弱い僕を責めてください。
これから先、僕はあなたを避けるようになると思います。
もしかしたら酷いことを言うかもしれない。
本当に言ったらどうしよう。
それだけで死ねる。
でもギリギリまでは生きますよ。
正気でいられるうちは、一緒にいたいですから。
わがまま、許してくれますか?
あなたといるうちは、死ぬ気で正気を保ちますから。
どれだけ辛くても、苦しくても、微塵も感じさせずに耐えてみせますから。
絶対に、あなたを傷つけません。
あなたは何の心配もせず、いつも通り過ごしてくれればいいんです。
あ、僕死んでるんでしたね。
ごめんなさい、今は生きてるもので。
あなたがこれを読むのは、僕が死んだあと。
もう、いないんですね。
これから僕がどうなるか分からないから、今書いてるだけで。
よし、言いたいことは大体書いた気がする。
これ以上書いてると、余計なことまで書きかねないので、この辺で終わりにしときますね。
それじゃ最後に。
咲良さん。
あなたに会えて、あなたと過ごせて、あなたを愛することができて、あなたに愛されて。
僕は、とっっっっっても!
幸せです!!
ありがとう。
僕の人生にいてくれて。
あなたがいなかったら、僕はもっと早くに自分を見限っていた。
あなたがいたから、僕はここまで生きることができた。
どうか、僕のことは忘れて、自分の幸せを掴んでください。
絶対に、追ってこようなんて思わないでください。
悲しいですから。
それでおばあちゃんになってからこっちに来て、覚えててくれるなら会いましょう。
素敵な時間をありがとう。
親愛なる渡貫咲良様、九尾の狐徒野朔羅より』

