ふたつのさくら

あっという間に内臓を食べ終え、最初に切り落とした頭を手に取る。

さてと、頑張りますか。

ここでは刀は使えない。

代わりに使うのは……この拳だ。

顔面を下に向けるように持って、拳を振りかぶる。

せっかく可愛い顔なんだから。

壊しちゃかわいそうだろ?

振り下ろせば、ゴンッ!!と、硬いもの同士がぶつかる音が響く。

何度も、何度もそこを殴りつけて、粘り気のある音に変わったころ、ようやく骨が砕けた。

細かくなった骨をどかし、薄い膜を剥がすと、それは姿を現した。

人の知識の集積。

行動を制御する司令塔。

握れば潰れてしまいそうなそれを、幾重にも刻まれたシワに沿うようにして少しつまむ。

今まで食べた人間は手足に本体があったから、人の脳みそなんて、食べるの初めてだ。

躊躇うことなく口に入れる。

その瞬間、ほのかな甘みが口の中いっぱいに広がって、溶けてなくなってしまった。

うわー、今までのやつらのも食べとけばよかった。

美味すぎて、こっちが溶けそう。

夢中で食べすすめて、気づいたときには空っぽになっていた。

「……お楽しみだ。」

残ってるのは本体、魂だけ。

ここまでも十分美味かった。

でも本体を食べないと、力を手に入れることはできない。

横に置いておいた刀を再び手に取り、腹の傷の少し上、ちょうど鳩尾のあたりに差し込む。

最初は下に。

2回目は上に、それぞれ動かして、最後に両手で真横に引き裂いた。

骨が砕ける派手な音が響いて、中身があらわになる。

あとは探すだけ。

それがまた大変なんだよ。

だってそこは人にとって最も大事な場所。

多くの骨や筋肉に守られ、簡単には渡さない、という無駄な努力がよく見える。

でもだからこそ、そこに魂がある人間は美味いのだ。

尖った骨で指を切らないようにしながら中身を漁る。

グチュグチュと気色悪い音が鳴るが、それすらも気にならないほどの高揚感があった。

そして。

「見つけた……。」

小さなそれを掴んで思いっきり引っ張る。

ブチブチと血管が切れ、血が跳ねた。

握り拳ほどしかないそれは、薄青い光を放っていた。

「ほら、やっぱりここにあった。」

それは心臓だ。

永遠に動くことをやめたそれだが、光を失うことなく、手の中にすっぽりと収まっていた。

一口齧る。

「っ!!」

今までに感じたことがないような、甘さと酸味が程よく混じった、濃厚な味がした。

美味い、美味すぎる。

こんなの知ったら、もう並みの魂じゃ満足できないよ。

無心で貪り、気づいたときにはもうなくなっていた。

「あーあ、終わっちゃった。」

この子、壊しちゃった。

悪いな、徒野朔羅。

「美味しかったよ。」