ふたつのさくら

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肉が裂ける気色悪い音が聞こえて、咲良さんの体が傾く。

こんなときでも僕の体は言うことを聞かなかった。

誰に支えられることもなく、咲良さんが地面に倒れる。

地面を這って進み、咲良さんを抱き上げた。

ほんの少しの間だったのに、その目は虚で、もうなんの姿も捉えていないように見えた。

「ぁ……ぁぁ……」

嫌だ……。

助けなきゃ……早く、血止めなきゃ……。

そう思うのに、刀を抜くことができない。

少し動かしただけでも、そこから大量の血が溢れ出してくる。

これを抜いたら、血を止める栓の役割をしているこの短刀を抜いたら……。

……間違いなく即死だ。

だけどそのままにしていても血を止めることはできない。

この状態でも、じわじわと滲み出てるんだから。

ふと、爽やかな柑橘系の匂いが鼻を掠める。

霊力の匂い。

なんで?さっき抑え込んだろ!

すぐに分かった。

もう、時間がない。

「どうしよ……どう、すれば……!」

助けなきゃいけない。

なんとかして、咲良さんを生かさなきゃいけない。

でも方法がわからない。

このままじゃ咲良さんが死んじゃう。

そして咲良さんが死んだら。

その霊力を抑えている最後の壁がなくなったら。

僕が……咲良さんを壊しちゃう……。

「ひっ……」

離れないと……。

でも置いていけない!

死なせたくない、助けたい、助けられない、時間がない、方法がわからない、壊したくない、一緒にいたい……。

僕は何をすればいいんだ、何が、できるんだ!

……何もでき……

瞬間、匂いが爆発的に膨れ上がった。

「っ?!嫌だ!!やめっ……」

抗う間もなく、乗っ取られてしまった……。