ふたつのさくら

……目が覚める。

時刻はほぼ0時。

こんな夜中に起きてしまうなんて、珍しいな。

布団に横になったまま、もう一度、目を閉じた。

ふと部屋の外からお母さまの話し声が聞こえてきた。

「……急にどうしたんですか?…………ええまあ。」

誰かと電話しているようで、内容はよくわからなかった。

「なんですって?!」

急にお母さまの声が大きくなる。

びっくりした……。

「あ、ごめんなさい……。」

電話の相手に怒られでもしたんだろう。

うるさいって。

まぁこんな夜中に、そんな大声出されたら、そりゃそう思うよね。

今ので完全に目が覚めちゃった。

「でも紅葉、いくらなんでも急すぎない?いつ来てもおかしくないとは思ってたけど……」

……ん?

紅葉って、朔羅のお父さまの名前だったよね?

先代さまと電話してるって、珍しい。

「……ていうかあなた、冷静すぎない?朔羅くんを止めようとは思わないの?早くしないと手遅れ……」

?!?!

朔羅を止める?手遅れ?

どういうこと?

お母さまは急ぎ足でその場を離れてしまった。

急いで携帯を手に取り、朔羅に電話をかける。

……………………。

繋がらない。

寝てるだけかもしれない。

寝てて、気づいていないだけかもしれない。

でも妙な胸騒ぎがした。

確かに朔羅は「また明日」って言ってきた。

だけど、「ただ生きてほしい」って言葉には「ごめんなさい」って……。

深くは考えなかったけど、それって「生きれない」ってこと?

「もう生きてくことができない」ってこと??

「っ!」

部屋を飛び出した。

この間と同じだ。

違うのは辺りが暗いことと、私の動きがそんなに早くないこと。

だいぶマシにはなったけど、全力で走ろうとすると、まだお腹が痛かった。

右腕もギプスついてるし。

家を出るまで、誰にも会わなかった。