ふたつのさくら

「……なんで急にそうなったんだ?」

止めることはしない。

無意味だから。

だけど、理由は知りたい。

いいですよ。

もう何もかもが最後なんだし。

「……咲良さんと話しました。そのときにあの子は、自分が死ぬことを提案してきたんです。」

先代と後ろにいる菖蒲が息を呑む。

僕も驚いたよ。

あの子に、そんなことを言う度胸はないと思っていた。

あれかな?

なにか大きな決断をするときは、女性の方がズバッと決めれるのかな?

「だから僕はもう死にます。あの子がバカなことをやらかす前に。僕さえいなくなれば、あの子の命は保障されるから。」

あの子は僕のために、死のうとしてる。

僕の中にいるやつを、自分の命を使って、抑え込もうとしてるんだ。

だから僕がいなくなれば、あの子が死ぬ理由はなくなる。





……だったら楽なんだけど。

実際のところ、そんなことはないだろう。

可能性としては五分五分。

僕が死んだことのショックでついてくるか、僕の願いを聞いて生きてくれるか。

どうなるかわからないけど、僕が死ぬことは無意味じゃないはずだ。

結果的に、咲良さんのこと、縛りつけちゃったな……。

忘れてくれていいですからね。

あなたの命しか……いや命すら満足に守れない、最低な男のことなんて。

「そうか……」

肯定も否定もしてこなかった。

納得はできない、でも理解はできる、って感じかな?

これが理解できるなんて、あなたも相当イカれてますね。

「僕の葬儀は行わないでください。死体も、山に捨てて、野良犬にでも食べてもらってください。僕はそんな大層な人間じゃない……。」

これだけ言えたらもう十分だ。

先代の返事を待たずに立ち上がって、部屋を出ようとする。

「朔羅。」

呼び止められた。

「そんな人生しか与えられなかったが、どうだった?」

この人生がどうだったかって?

「そうですね……」

生まれたときから自由に生活できなくて。

「辛いことも苦しいこともたくさんあったけど……」

だけど、それでも。

「咲良さんに会えたから、悪くない人生だったと思いますよ。」

いつでも、どこでも。

僕の光は咲良さんだけだ。

「こんな親不孝な息子で、ごめんなさい……。」

部屋を出た。