ふたつのさくら

それを手に持ったまま、凍夜の部屋の電気を消して、今度は先代の部屋に向かう。

さっきと同じように、声をかけずに開けた。

先代は起きてると思ったのに、部屋の明かりを消して、布団に横になって、手元の灯りで本を読んでいた。

その体勢、キツくないの?

まあ、もう関係ないんだけど。

先代は僕が来たことに気づくと体を起こした。

「朔羅、菖蒲も。こんな時間にどうした?」

僕は先代の前に座る。

菖蒲もその後ろに座った。

「先代。今このときを以って、僕は徒野の当主を降ります。次代は凍夜に任せます。」

先代は声を出さずに目を見開いた。

そして悲しそうに俯いて、声をかけてきた。

「……朔羅。そんな勝手が、許されると思っているのか?」

怒ってるわけではない。

憐んでいるみたいだ。

「思ってません。でも、最低限の義理は通すために、こうして報告に来ました。」

「何を言っても無意味、か……。」

ご理解いただけたようで。

先代が顔を上げた。

自然と目が合う。

……この人、いつもこんな悲しい目をしてたのかな?