ふたつのさくら

凍夜の部屋に向かって早足で歩く。

菖蒲もついてきた。

手も口も出さないなら、別に構わない。

声をかけることなくそっと襖を開けた。

寝てると思っていた凍夜はまだ起きていて、僕が来たとわかると飛びついてきた。

「兄さんだ!」

反射的に受け止める。

凍夜は最近、学校だったり、僕の代わりに家の仕事をやってくれたり。

あとは単純に菖蒲に止められたりで、僕の部屋には来ていなかった。

久しぶりに会ったから、嬉しかったのだろう。

凍夜の肩を持って、目線を合わせる。

「凍夜、明日の朝になったら、僕の机の中のノートをよく読みなさい。そこに全部書いてあるから。」

そしてぎゅっと抱きしめた。

「兄さん?」

「ごめんな。こんな兄貴を許してくれ。」

不思議そうに首を傾げる凍夜に術をかける。

明日の朝まで起きないように。

初めてやったけど、意外とできるものだ。

凍夜を布団に寝かせて、悪いとは思いながらも机の中を探る。

多分菖蒲なら……。

……見つけた。

「おいさく、っ!」

そこから取り出した短刀を、菖蒲の首に当てる。

「次はないって、言ったよね?」

「……ちっ」

菖蒲の動きが止まったのを確認して、短刀を納めた。

「切れてないよ。まだ、ね。」

峰を当てたから。